「糖尿病」は危険な病気

急に凄く寒くなってきました。
先日は久しぶりに本格的な雪が降りましたね。

老齢動物も幼若動物も急な寒さで体調を崩しやすいので、保温に気を配りましょう。
エアコンだけでは床付近は温度が上がらないことがあるので、時々気温計でチェックしましょう。

うちもやられましたが、コードを齧るイタズラは危ないので、安全対策を心掛けましょう。
※詳しい状況はこちらのブログをご覧ください。
 
ハル
 
寒くなると「腎臓病」「心臓病」とともに「糖尿病」も悪化しやすくなります。
みなさまは「糖尿病」にどんなイメージをお持ちでしょうか?

尿に糖が出る
血糖値が高い
毎日インスリン注射
食事制限

などでしょうか。

獣医師にとって「糖尿病」は、来院された時には既に助かるかどうかギリギリの事が多い、危険な病気です。

飼い主様は、以下のような症状に気付かれ、来院されることが多いようです。

多飲多尿
食欲がない
痩せてきた
突然グッタリしてきた など

初期にはハッキリとした症状がなく、飼い主様が気付かないうちに進行していることが多い病気です。

では、「糖尿病」とはどういった病気なのでしょうか?

ざっくり言うと、糖をエネルギー源として利用できなくなる病気です。
細胞が血液中の糖を利用できなくなるため、血糖値が高くなります。

そして、「血糖値をインスリン注射で下げる」とは「インスリンにより糖をエネルギー源として利用できるようにしてあげる」ということなんです。

糖をエネルギー源として利用できなくなって困った身体は、脂肪をエネルギー源として利用し始めます。
健康な状態なら、脂肪燃焼は大変良い事ですが、糖が利用できない状態では大変危険です。
脂肪を分解した残りカスのケトン体が量産され、ケトアシドーシスと呼ばれる、酸性に傾いた状態になります。

「酸性だから何なの?」と思われるかもしれませんが、身体は化学反応の連鎖で生きていますので、すごく困ります。
命に関わる状態です。

すごく気持ち悪いので、食欲が無くなったり、吐いたりもします。
命に関わる状態です。

身体自身も危ない事を理解しているので、一生懸命、尿として排泄します。
そのため、尿に糖が出ます。

これが「糖尿病」の語源ですね。

ケトン体も同じく、尿として排泄されます。
食欲が無く水ばかり飲んで、排尿が多くなることも多いようです。

また、糖をエネルギー源として利用する際に、カリウムという物質が必要なのですが、これは筋肉の収縮や尿の排泄にも関係しています。
筋肉の塊の臓器と言えば、心臓ですね。
つまり、カリウムは高すぎても低すぎてもよろしくありません。

食欲が無いので食事からカリウムを補給できない上に尿で出してしまうので、緊急事態の糖尿病の場合、ほとんどの子がカリウム不足の状態です。

このカリウムと水分を補給しながら、場合によってはアシドーシスの是正もしながら、糖分を利用できるようにします。
水分とカリウムが十分に満たされていないと、単純にインスリンだけ打っても効果が出ません。

しかし、心臓や腎臓が悪い子は、尿による糖やケトン体の排泄が難しいので、一気に深刻な状態になる上に、ゆっくりとしか点滴できません。
水分やカリウムを補う前に身体の限界がきてしまうので、とても救命が難しくなります。

もちろん、退院して自宅でインスリン注射を続けながら元気に生活している子もいます。

某CMの「美味しいものは糖と脂肪でできている」は金言ですね。

「塩」「糖」「 脂」
どれもほどほどにしましょう。

肥満気味の子は、ダイエットと定期的な血液検査をおすすめします。