みなさんは「SFTS」をご存知でしょうか?
日本語では「重症熱性血小板減少症症候群」と呼びます。
SFTSは、数年前から人間でも死亡例が出ている「ウイルス疾患」です。
人間の症状と感染源
人がSFTSに感染すると、食欲不振や嘔吐下痢、倦怠感、発熱などの症状が見られます。
重症化すると、赤血球、白血球や血小板の減少が起こります。
死亡率は10〜27%と言われています。
マダニに咬まれることで感染するので、庭仕事や山歩きの際に感染することが多いようです。
SFTSに感染していて症状が出ている動物に噛まれることで、感染することもあります。
感染した動物の唾液や体液に、ウイルスが含まれるそうです。
犬や猫もマダニに咬まれて感染することがわかっています。
こう書くと、遠い話のように感じるかもしれません。
しかし、SFTSは思いのほか身近に迫っている感染症なのです。
当院での発生例
実は、今年に入ってから、1頭の猫がSFTSによって亡くなりました。
家の中で飼われていた猫です。
近隣にお住まいのみなさまにも広く危機感を持ってほしいとお願いし、このようなブログを書くことを飼い主さまにご許可いただきました。
本当にありがとうございます。
受診時に飼い主さまから伺った情報は、以下の通りでした。
- 突然の食欲不振→廃絶
- 元気消失
- 時々庭に出ていた
- 少し前にケガをしていた(野良猫に噛まれたかもしれない)
- ワクチン接種あり
- ノミ・ダニ予防していなかったので、この冬から予防開始
診察すると、40℃を超える発熱がありました。
そして、日毎に貧血と白血球減少がどんどん進みました。
症状と情報からSFTSを疑い、山口大学に検査を依頼しました。
SFTSだと仮定しても、現状では対症療法しかありません。
皮下点滴と解熱剤、吐き気止め等の注射。
そして、なんとか口から食べてもらおうとチャレンジするものの、完全拒否。
飼い主さまも食べさせようと試みてくださいましたが、噛まれて怪我をされてしまいました。
残念ながら症状は急速に悪化し、ご自宅で亡くなってしまいました。
その後、SFTS「陽性」の結果が届きました。
飼い主さまには感染の可能性がありましたので、急いでご連絡しました。
愛猫を助けられなかったことがとても心苦しく、お叱りも覚悟していました。
しかし、返って来たのは、私たちのことまで心配してくださる温かいお言葉でした。
その後、病院を受診され、大丈夫だったとご連絡いただきました。
愛猫を喪った哀しみの中でもお気遣いいただき、大変ありがたく思いました。
大切な家族を感染から守るために
決して遠い場所の話ではありません。
大野城市で起こったことです。
身近にいるマダニがSFTSウイルスを保有している可能性があること
野生動物や外猫がSFTSに感染している可能性があること
私がこのブログを通して強くお伝えしたいのは、このことです。
大野城市は、自然豊かな場所です。
先日、井ノ口公民館の近くで、車に轢かれたアライグマの遺体を見ました。
野生の動物が身近な場所で暮らしているのです。
野生動物には、安易に近づかないでください。
庭でペットを遊ばせる時も、気を付ける必要があるでしょう。
犬・猫、そして、人間がSFTSに感染しないために、以下の対策を心がけてください。
- 犬も猫もキチンと動物病院処方のノミ・ダニ予防薬で予防をする
- 猫は完全室内飼い(外猫や野生動物とのケンカ傷予防)
- 野生動物には近づかせない、近づかない
- ペットとキス、顔を舐めさせる、同じ布団で寝る等の過剰なスキンシップをしない
- 動物の世話をしたり、撫でたりしたら洗剤で手洗い消毒する
正しい知識で適切に怖がる(=楽観視しすぎない・過度に怖がり過ぎない・デマに流されない)ことが大切です。
この季節は、子犬・子猫の体調不良が増えます。
幼若齢の動物の体調不良は、急速に悪化する事があります。
SFTSとは関係なく、早めに受診しましょう。
人間もペットも体調不良を見逃さず、早めの受診が大事ですね。
四王寺山より大野城市を望む