日中は真夏のように暑い日が続きましたね。
動物病院では、ボチボチと出産トラブルや、産まれたばかりの仔猫の来院がある季節です。
皆さんは、犬や猫のお産に、どんなイメージがありますか?
安産
多産
かわいい赤ちゃん
尊い母性愛
そんなイメージでしょうか?
しかし、犬や猫も人間と同じように、お産は「命懸け」なのです。
陣痛は半端なく痛いし、多胎なので時間はかかるし、血も出るし・・・
母子ともに死亡する事だってあり得ます。
先日、外猫が妊娠したかもしれないという飼い主さんがいらっしゃいました。
「朝から時折、口を開けてハアハア苦しそうにしている。不安で見ていられない」とのことでエコー検査をしたところ、やはり妊娠でした。
お預かりしてすぐに、一頭目が産まれてひと安心。
顔や身体をタオルでゴシゴシ刺激して、呼吸を促しつつ、ヘソの緒を糸で縛って切り、胎盤を処理します。
次に心配なのは、親猫が仔猫の授乳と育児をするかです。
中には、子どもを許容できずに育児してくれなかったり、攻撃してしまう親もいるので、緊張の瞬間です。
今回の子は、仔猫を返すまで不安そうにソワソワして鳴き、返した途端に身体を舐めて授乳してくれて、心底ホッとしました。
「本能が育児を促す」と言うのは、半分正解で半分大ハズレです。
「育児放棄」や「子殺し」もあります。
原因は一概には言えません。
血統書付きで、生活に何の不足もないような親猫や親犬が、出産したものの産まれた子どもを自分の子と認識できずに、近寄ると攻撃するというケースもありました。
野良で、恐らくウイルス性の風邪を発症した為に、親に置き去りにされた仔猫もいます。
他の兄弟を守り育てる為の、苦渋の選択だったのかもしれません。
かと思えば、勝手に部屋に入り込んで子どもを産んで、やさしい人間にたっぷりご飯をもらって安息の地を得たせいか、自分の子ではない子猫のお尻を舐め、授乳して育ててくれる子もいます。
また、「戌の日」の風習のせいで、犬は安産だと思われていますが、実はそんなことはありません。
先日も、難産の末に帝王切開手術に踏み切ったケースがあったばかりです。
前日から食欲がなく、朝から陣痛があるものの夕方まで産まれず、来院されました。
一頭目は何とか出産したものの、二頭目の頭が産道を通らず帝王切開に。
開腹して子どもを出す為に子宮を触った途端に、子宮が横に破裂しました。
もし、もう少し様子を見ようとしていたらと思うとゾッとします。
子どもを取り出した後、親犬の安全の為に卵巣・子宮を摘出しました。
死産の恐れもありましたが、新生児も無事に蘇生でき、母子ともに生還できました。
この子は最初、我が子を認識できず、授乳も嫌がっていました。
病院では、私たちが横に寝かせ、なだめ透かして授乳させていました。
舐めてはくれなかったので心配でしたが、飼い主さんが家で根気強くほめて教えていたら、しっかり授乳と育児をし始めたそうです。
シーズーやフレンチブル、パグなどの短頭種や、チワワやヨークシャーテリアなどの身体の小さい母犬は、帝王切開の確率が格段に上がるので要注意です。
私は学生時代に4頭の仔猫の授乳育児で、育児ノイローゼを経験しました。
2時間おきとは言え、4頭もいるので休憩時間はほぼナシ。
しかも、排尿・排便も刺激しないとできない。
人工乳だから便秘しやすい!
ミルクが冷えると飲まない!
ほ乳瓶の乳首の出が悪くても、良すぎても気にくわない!
小さいから余計に心配!
・・・人工哺乳育児は半端なく大変です。
もし、現在飼っているペットの妊娠を考えているなら・・・もしもの事態も想定してくださいね。